公認会計士1〜3年目の転職についての本音――「新人なのに焦る自分」は、おかしくない

はじめに

監査法人に入って1年、2年、あるいは3年。


毎日、調書を作り、レビューを受け、次の現場に移る。仕事は覚えた。でも、ふとした瞬間にこう思う。


「自分は成長しているんだろうか」


AIが監査調書を自動生成するニュースを見た。生成AIを使いこなす同世代の非会計士が、スタートアップでCFO候補として活躍している話を聞いた。一方、自分は今日も前年の調書を参照しながら、同じ手続きを繰り返している。


焦る。でも、修了考査が終わるまでは辞められない。仕方なく監査法人に席を置いている。転職サイトを眺めてみるけれど、情報が多すぎて何が正しいのか分からない。


もしあなたが今、そんな状態にいるなら、この記事はあなたのために書いています。


最初に結論をお伝えします。その焦りは異常ではなく、むしろ健全です。そして、焦っている「今」だからこそ、やっておくべきことがあります。それは「今すぐ転職すること」ではなく、自分のキャリアの判断軸を持つための準備を始めることです。


「成長実感がない」のは、あなたの問題ではない

まず、安心してほしいことがあります。


監査法人の1〜3年目で「成長している実感がない」と感じるのは、あなたの能力が低いからではありません。監査業務の構造そのものが、若手に成長実感を与えにくいのです。


監査法人で求められるスキルは、論理的思考力、数値の正確性、チームでの報告体制の構築など、非常にレベルの高いものです。しかし、これらは本質的に「リスクを最小化するためのスキル」であって、「価値を生み出すためのスキル」ではありません。


事業会社で求められるのは、予算策定のために事業部と議論する力、不確実な中で意思決定を支える力、経営者と同じ目線で数字を語る力です。これらは監査業務ではほとんど身につかない領域です。


つまり、あなたが感じている「成長していない感覚」は、監査法人で伸ばせるスキルと、あなたが本当に目指したいキャリアで必要なスキルの間にギャップがあることに気づき始めているサインなのです。


これは能力不足の証拠ではなく、キャリアに対する感度の高さの証拠です。



焦りの正体は「情報の不足」にある

では、なぜ焦りが「行動」ではなく「停滞」に変わってしまうのか。


多くの場合、原因は情報の不足です。


「転職したい」と思ったとき、まず転職サイトを見る方が多いでしょう。しかし、会計士の転職は非常に特殊なキャリアパスです。一般的な転職情報は、会計士にはほとんど当てはまりません。


たとえば、「3年以上の実務経験必須」と書いてある求人を見て「自分はまだ無理だ」と思い込む。あるいは、「年収800万円以上」という条件に「今の自分には分不相応だ」と萎縮する。


しかし、会計士の転職市場は一般の転職市場とは構造が違います。監査法人で2〜3年の経験を積んだ会計士は、事業会社やIPO準備企業から見れば非常に魅力的な人材です。あなたの市場価値は、あなた自身が思っているよりも高い可能性があります


問題は、それを知る手段がないことです。


ネットの情報は玉石混交で、会計士のキャリアの専門性を正しく理解した情報源は限られます。SNSには転職の成功談も失敗談もあふれていますが、その人と自分では前提条件が違う。結局、「情報はたくさんあるのに、自分にとって何が正しいか分からない」という状態に陥ります。


ここで知っておいてほしい選択肢があります。



「今すぐ転職しなくても、エージェントは使える」という事実

「転職エージェント」と聞くと、多くの方が「転職を決めた人が使うもの」と思っています。


これは大きな誤解です。


転職エージェントは、情報収集のためだけに使うことができます。しかも、優れたエージェントであれば、「今は動くべきではない」というアドバイスをしてくれます。


なぜなら、会計士専門のエージェントにとって、あなたは「今すぐ転職する人」である前に「将来にわたってキャリアを伴走する相手」だからです。目先の成約を急ぐエージェントと、長期的なキャリア形成を支援するエージェントでは、提供される情報の質がまったく違います。


具体的に言えば、情報収集としてのエージェント活用では、こんなことが分かります。


今の自分の経験・スキルで、市場ではどんなポジションに応募できるのか。監査法人に何年いるのが最適解なのか。事業会社のCFOを目指すなら、あとどんな経験を積むべきなのか。IPO準備企業やコンサルなど、選択肢にはどんなものがあるのか。


これらは、ネット検索では絶対に得られない「自分に特化した情報」です。


ただし、注意点があります。転職エージェントの言うことをすべて鵜呑みにしてはいけません。


会計士は「懐疑心(Professional Skepticism)」を大切にする職業です。転職活動においても、その姿勢は同じように必要です。エージェントの意見はあくまで参考情報として捉え、納得できるまで質問し、最終的には自分で判断する。この姿勢が、キャリアの失敗を防ぎます。


そして、もう一つ大切なこと。エージェントを選ぶ際は、「その人が会計士のキャリアを本当に理解しているか」を確認してください。


会計士という職種は、非常に特殊なスキルセットとキャリアパスを持っています。「監査と経理ってそんなに違うんですか?」と質問してくるようなエージェントに、自分のキャリアを相談すべきではありません。


たとえるなら、弁護士の専門性を会計士が正確に見極められるか、という話に近いです。同じ士業であっても、専門外の領域を深く理解するのは難しい。だからこそ、会計士のキャリアは、会計士に相談するのが最も確実なのです。



「修了考査まで動けない」は、準備期間に変えられる

修了考査が終わるまでは監査法人にいなければならない。これは現実的な制約であり、受け入れるべきものです。


しかし、「動けない期間」は「動けない」のではなく、「準備できる期間」です。


キャリアの意思決定において最も重要なのは、自分の「判断軸」を持つこと。これは、転職先を比較するための条件リストではありません。「自分が何を大事にしたいか」「将来どんな自分でありたいか」を言語化した、意思決定の物差しです。


判断軸を持つためには、自己分析が不可欠です。


しかし、会計士の多くは一般的な就職活動を経験していません。試験に合格し、そのまま監査法人へ。自分の価値観や将来像と丁寧に向き合う機会がないまま、キャリアを始めているのです。


だからこそ、修了考査までの期間を使って、自分自身のことを知る時間を確保してほしい。

具体的には、次のような問いに向き合ってみてください。


なぜ自分は公認会計士になったのか。監査の仕事で心が動いた瞬間はあったか。5年後、どんな場所でどんな仕事をしていたいか。お金・時間・やりがい、今の自分が最も優先したいのはどれか。


これらの答えは、誰かに教えてもらうものではなく、自分の内側から見つけるものです。ただし、一人で向き合うのは簡単ではありません。第三者の視点があることで、自分では気づかなかった価値観や強みが浮かび上がることも多い。自己分析は「技術」であり、正しいやり方さえ分かれば、誰でも再現可能なプロセスです。


若い時期にこそ「経験を買う」という発想を持つ


キャリアの優先順位を考えるとき、特に若手の方に伝えたいことがあります。


若い時期の「時間重視」は、もったいない。


もちろん、ワークライフバランスは大切です。しかし、体力的にも精神的にも挑戦に最適で、失敗が許される年代で「楽な環境」を選んでしまうと、後で取り戻すのが難しくなります。


20代は「お金を稼ぐ」時期ではなく、「経験を買う」時期です。


ここで言う「経験を買う」とは、無理をして激務の環境に飛び込むことではありません。将来的に自分の市場価値を高めるために必要な経験を、意図的に選び取るということです。


たとえば、監査法人での経験が「とても役に立った」と感じている会計士の割合は、職位が上がるほど高くなる傾向があります。ジュニアスタッフの時点では約35%程度ですが、マネージャー以上では約80%に達します。


これは何を意味するか。監査法人で得られるスキルの価値は、その場にいるときではなく、外に出てから初めて実感できるということです。


だからこそ、「今の環境に意味がない」と感じていても、即座に辞めるのではなく、「ここで何を得るか」を自分で定義し直すことが大切です。


インチャージを経験する。異なる業種のクライアントを担当する。後輩の指導を通じてマネジメント力を磨く。これらは一見すると「ルーティン」に見えるかもしれませんが、後のキャリアで必ず武器になります。


同時に、「監査法人の外にどんな世界があるのか」を知っておくことで、今の仕事の意味づけが変わります。CFOを目指すために必要なスキルは何か。IPO準備企業では会計士にどんな役割が求められるのか。社外役員やフリーランスという働き方には何歳頃からチャレンジできるのか。


こうした情報を「今のうちに」手に入れておくことが、修了考査後の判断を格段にクリアにします。


「焦り」は武器になる。ただし、正しい方向に向ければ

最後に、あなたの焦りについて。


焦りは悪いものではありません。現状に違和感を覚え、もっと成長したいと思っている証拠だからです。


ただし、焦りをそのまま「衝動的な転職」に変えてはいけません。むやみに書類を出してしまうと、不採用になった企業には1〜2年間再応募できなくなる場合があります。準備不足のまま動いて、「本当に行きたい」と思ったタイミングで選択肢がなくなる――これは最も避けたい失敗です。


一方で、焦りを「何もしない」に変えてもいけません。「いつか動こう」は永遠に来ないからです。


焦りを正しい方向に向けるとは、今すぐ転職することでも、今の不満を我慢することでもなく、「将来の自分のために、今から情報と判断軸を手に入れる」ことです。


公認会計士のキャリアの選択肢は、想像以上に広い。監査法人を出た後の道は、事業会社の経理、CFO候補、コンサルティングファーム、社外役員、独立起業と多岐にわたります。その中から自分に合うものを見つけるには、「自分を知ること」と「市場を知ること」の両方が必要です。


自分を知るための自己分析は、一人でもできますが、第三者の力を借りた方が圧倒的に深くなります。市場を知るための情報収集は、ネット検索にも限界があり、会計士のキャリアを熟知した専門家との対話が最も効率的です。


「まだ修了考査も終わっていない自分が相談してもいいのだろうか」


そう思うかもしれません。しかし、早い段階で自分のキャリアについて考え始めた人ほど、修了考査後の動き出しが速く、結果として納得感のあるキャリア選択をしています。


今の焦りを、未来の自分への投資に変える。


その第一歩は、信頼できるプロに「今は動くべきか、それとも何を準備すべきか」を聞いてみることです。


答えは「今すぐ動け」かもしれないし、「あと1年は監査法人で○○の経験を積むべき」かもしれない。どちらであっても、自分で選び取った判断には後悔が残りにくい


あなたのキャリアは、あなたが思っている以上に可能性に満ちています。その可能性を正しく知るところから、始めてみませんか。


▶ 「今は情報収集だけ」でも歓迎しています。

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無料相談のご案内

株式会社PCPは、公認会計士による公認会計士のための転職エージェントとして、専門性と実践力を融合した支援を提供しています。

3つの特徴

#01

会計士によるキャリアコンサル

株式会社PCPは、監査法人出身かつ事業会社でのマネジメント経験を有する会計士がキャリアコンサルティングをさせていただいています。 求職者様と同じ会計士としての視点でお話を伺えるため、それぞれ求職者様ごとの会計士としてのキャリアプランを想定しながら、より適切なアドバイスができます。また、事業会社でのマネジメント経験も有しているため、採用企業のマネジメント層の視点をもって求めているスキルや資質などについて、より適切なアドバイスができます。 会計士が監査法人から他業種に転職するにあたって留意すべきポイント、他業種から監査法人に転職するにあたって留意すべきポイントはそれぞれ異なります。それらの留意すべきポイントは、実際に会計士として監査法人で働いた経験を有する者、他業種で働いた経験を有する者でないとなかなか語ることは難しいものです。

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#02

会計士特化の自己分析サポート

より納得度の高い転職を実現するためには、自己分析をするべきであると考えています。 弊社では独自で考案した「キャリアコンサルシート」を用いて、求職者に寄り添って自己分析をサポートしていきます。 自己分析はひとりでやるには限界があります。 わたしたちが第三者的な立場でアドバイスをさせていただくことで、ひとりでは見えてこなかった“気づき”を得ていただくことが出来ます。

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#03

会計士専門の ​​​​​​​性格タイプ別診断

大学との共同研究でつくりあげた会計士専門の性格診断ツール(※)によって、会計士の性格タイプごとのキャリア情報を集積しています。

これにより性格タイプごとの統計データを分析し、あなたの性格タイプにあったキャリア形成に関する情報をご提供します。

この性格診断ツールは会計士の約10人に1人が利用しています。

※ 弊社グループ会社である(株)CPAコンパスが運営する会計士専門メディア「会計士の履歴書」の性格診断ツールを利用します

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CPA AGENT

コンサルタント

どんな働き方があるか話を聞きたい方、キャリアパスを考えたい方、今すぐ転職相談したい方も、下記お問い合わせからご連絡ください。

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    代表取締役

    2008年合格後、監査法人にて多様な業種の監査や内部統制業務を担当し、2011年に株式会社PCPを創業。その後は事業会社の管理部長や経理財務マネジャーとしてIPO準備や決算早期化をリードし、自らの経験をもとに会計士のキャリア支援を担っています 。

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    大阪事務所所長

    2009年合格後、成学社にて経理課に従事し、連結決算や開示対応などを担当。その後、複数のビジネス領域で経営・財務を統括し、2016年よりPCP大阪所長として、会計士の多様なキャリア支援に従事しています。

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この記事は私が書きました

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執筆者紹介

【執筆者 桑本 慎一郎】株式会社PCP代表取締役


2008年合格後、監査法人にて多様な業種の監査や内部統制業務を担当し、2011年に株式会社PCPを創業し、公認会計士専門の転職エージェントとして15年を迎える。その後は事業会社の管理部長や経理財務マネジャーとしてIPO準備や決算早期化をリードし、自らの経験をもとに会計士のキャリア支援を担っている。

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