公認会計士が“経営の中心”へ──スタートアップCFOという挑戦
「スタートアップのCFOに挑戦したいけど、経営経験がない自分に務まるのか――」
そう不安を感じる公認会計士は少なくありません。
監査法人では評価される「正確さ」「慎重さ」が、スタートアップでは“動けない理由”になってしまうこともあります。
しかし、経営の現場で求められるのは「完璧な答え」ではなく、「今、会社を動かすための数字」です。
CFOやIPO責任者として活躍する会計士たちは、知識よりも“経営者と共に考える姿勢”で信頼を得ています。
この記事では、公認会計士がスタートアップでCFO・IPO責任者として成功するための思考法、
実際にキャリアを変えた3名の事例、そして後悔しない転職の軸を紹介します。
経営の右腕として成長したいあなたへ。
“監査で培った論理”を、“経営を動かす力”に変えるキャリアの第一歩を、一緒に考えていきましょう。
この記事は私が書きました
執筆者紹介
【執筆者 桑本 慎一郎】株式会社PCP代表取締役
2008年合格後、監査法人にて多様な業種の監査や内部統制業務を担当し、2011年に株式会社PCPを創業し、公認会計士専門の転職エージェントとして15年を迎える。その後は事業会社の管理部長や経理財務マネジャーとしてIPO準備や決算早期化をリードし、自らの経験をもとに会計士のキャリア支援を担っている。
監査法人出身でも経営に近づけない現実
「経営に近い仕事がしたい」──
監査法人で経験を積んだ公認会計士が、次のキャリアとしてスタートアップCFOやIPO責任者を志すとき、誰もが一度は抱く思いです。
しかし実際にそのポジションに就くと、思い描いた理想とのギャップに戸惑う人が少なくありません。
監査法人では、数字の正しさを保証することが使命でした。
しかし、スタートアップでは数字を“生み出す”側に回ります。
この違いが、最初の壁です。
売上や資金繰りの構造、組織の意思決定スピード、経営者の思考——どれも監査の延長線上にはありません。
「もっと経営に踏み込みたい」と思って転職したはずなのに、気づけば“数字の番人”として周囲から距離を置かれてしまう。
そんな現実が待っているのです。
多くの会計士が誤解しているのは、「IPO準備の知識があればCFOになれる」という思い込みです。
確かに監査法人のIPOチーム出身という肩書きは評価されます。
ですが、スタートアップの現場で求められるのは、チェックリストではなく“経営者の思考を翻訳できる力”です。
たとえば、経営者が語る「成長戦略」「調達の意図」「人材投資の優先順位」などを理解し、数値に落とし込む。
その“間”を埋められなければ、経営陣のパートナーにはなれません。
もうひとつの壁は、「スピード感」と「不完全さ」です。
監査法人では、すべての根拠を揃え、正確さを優先することが求められました。
一方、スタートアップでは“60点でも前に進む判断”が日常です。
完璧さより、意思決定の速さと挑戦を支える勇気が問われます。
監査法人の文化で培われた「慎重さ」が、経営の現場では“ブレーキ”になることさえあります。
このように、監査法人出身の公認会計士がスタートアップのCFOやIPO責任者として苦戦する理由は、スキルではなく「立ち位置の違い」にあります。
経営者の隣で戦略を描くためには、財務知識以上に“事業を見る目”が必要です。
会計の専門家であることに誇りを持ちながらも、その枠を超えられるかどうか——。
そこに、キャリアの分岐点があります。
スタートアップCFO・IPO責任者として成功するために必要な思考
監査法人の世界では、正しさを追求することが評価されます。
一方、スタートアップの世界では、「正しい答え」を探すよりも「今、動けるか」が問われます。
つまり、CFOやIPO責任者として成功するためには、“会計士としての精度”より“経営者の意思決定を支えるスピード”が重要なのです。
では、監査法人出身の公認会計士が経営に信頼されるCFOになるには、どんな思考を持つべきなのでしょうか。
その答えは、「専門家」ではなく「経営者の共犯者」になることにあります。
経営者は、完璧な情報が揃うまで待ってくれません。
資金調達、人材採用、事業拡大──次々と判断が求められる中で、CFOは“数字でリスクを可視化し、経営者が前に進む根拠を与える存在”である必要があります。
それは「止める会計」ではなく、「動かす会計」です。
この視点を持てるかどうかが、監査出身の会計士がスタートアップで信頼されるかの分岐点になります。
また、もう一つの鍵は、「全体最適の思考」です。
監査法人ではクライアントを“外から見る”立場でしたが、スタートアップでは“内から整える”役割に変わります。
自部門の最適化ではなく、会社全体の成長構造をどう作るかを考える必要があります。
たとえば、単なる会計管理に留まらず、組織設計・資金計画・採用計画と連動して、会社の成長を数字で設計する。
そこにCFOとしての本質的な価値があります。
そして最後に、スタートアップのCFOやIPO責任者に最も必要なのは、“経営者のビジョンを翻訳する力”です。
経営者が持つ熱量や理念を、投資家・社員・監査法人・証券会社といった多様なステークホルダーに伝える。
会計士は、数字という共通言語を使って“夢を現実に変えるストーリーテラー”になれる職業です。
その力を最大限に発揮できるのが、まさにスタートアップのCFOというポジションなのです。
監査法人出身者がこのマインドを持てば、経験不足はハンデになりません。
経営者が求めているのは、即戦力の“経験者”ではなく、経営に寄り添い、未来を一緒に描ける“相棒”です。
その意味で、スタートアップCFOという挑戦は、公認会計士が最も自分の力を発揮できるキャリアの一つなのです。
事例①:IPOチーム出身、公認会計士が創業5年目の企業でCFOに就任
実際にキャリアを変えた公認会計士たちの転職事例
-
# 01
事例①:IPOチーム出身、公認会計士が創業5年目の企業でCFOに就任
監査法人でIPO支援チームに所属していた30代前半の公認会計士。
数多くの上場準備企業を担当していたものの、「実際に経営側でIPOを成功させたい」という思いからスタートアップへ転職。
転職先は、シリーズBのテック企業。経理財務の立ち上げと同時に、予実管理の仕組みづくりを主導しました。
上場審査対応では監査・証券・法務との調整役を担い、わずか2年でCFOに昇進。
「監査で学んだロジック」と「現場での意思決定スピード」を両立させたことで、経営陣から絶大な信頼を得ました。「監査時代は“正しい答え”を求めていた。
でも今は“最適な判断”を経営者と一緒に作る仕事に変わった。」 -
# 02
事例②:BIG4出身、シード期企業でIPO責任者へ
BIG4監査法人でシニアスタッフとして働いていた公認会計士。
監査法人で得た知識はあったものの、組織の大きさに限界を感じ、「自分の意思決定が会社を動かす経験」を求めて転職。
移籍先は創業2年のスタートアップ。財務経理体制が未整備の状態から、会計方針・月次締め・資金繰り表をゼロから設計しました。
その実績が評価され、1年後にはIPO責任者に抜擢。経営会議にも出席し、経営者とともにKPI策定・資金調達・監査法人対応を推進。
「実務経験がなくても、意思決定に数字で貢献する姿勢」がCFO候補としての信頼につながりました。「求められていたのは知識ではなく、
“一緒に経営する覚悟”だった。」 -
# 03
事例③:スタートアップCFO補佐から最年少IPOリーダーへ
監査法人で5年勤務後、IPO準備企業にCFO補佐として転職した会計士。
当初は月次決算や監査対応が中心だったが、経営会議に同席する中で、事業戦略を数字で語る力を磨きました。
スタートアップでは、事業が変化するたびに会計処理・開示方針も変わる。
柔軟に対応しながら「数字で経営を動かす」経験を積み、最終的にはIPO責任者として上場プロジェクトを完遂。
現在は複数社の社外CFOとして活動し、若手会計士の育成にも関わっています。「数字に正解はない。
経営者と一緒に“未来を定義する”のがCFOの仕事。」
これら3名に共通しているのは、「監査経験を捨てた」のではなく「経営のために使った」という姿勢です。
会計士としての専門性を土台に、経営者の信頼を勝ち取り、企業の成長を加速させています。
スタートアップに飛び込む勇気が、彼らを「経営に最も近い会計士」に変えたのです。
経営と共に成長するキャリア──スタートアップ転職で後悔しないために
スタートアップCFOやIPO責任者として活躍する公認会計士には、ひとつの共通点があります。
それは、「転職をゴールにしていない」ということです。
彼らは“入社後にどんな価値を生み出したいか”を明確にし、その軸に沿ってキャリアを選んでいます。
逆に、求人条件や年収、表面的な「CFO候補」という肩書きだけで選んだ場合、多くは半年以内に壁にぶつかります。
なぜなら、スタートアップのCFOは「守る仕事」ではなく「創る仕事」だからです。
制度も仕組みも整っていない環境で、経営者の理想を数字で形にし、社内外の信頼を構築する。
このダイナミックな環境に飛び込むには、“安定”ではなく“成長”を目的にしたキャリア軸を持つ必要があります。
ただし、成長を目的にするというのは、「なんでも挑戦する」こととは違います。
本当に成長する会計士は、自分の“伸びしろ”を理解しています。
「どのスキルを次のフェーズで磨くべきか」「経営に近づくために何を捨てるか」──
この選択を意識的に行える人ほど、入社後に飛躍しています。
そして何よりも大切なのは、経営者と対等に向き合う覚悟です。
CFOは社長の右腕として、時にブレーキをかけ、時に背中を押す存在です。
求められるのは“正しいことを言う人”ではなく、“信頼されて意見を言える人”。
数字を通して、経営者の理想と現実をつなぐ通訳のような立場がCFOなのです。
PCPでは、転職希望者に「まずキャリアの軸を言語化してもらう」ところから始めます。
60%が途中で挫折するキャリアコンサルシートは、単なるフォームではありません。
「なぜ経営に関わりたいのか」「どんなリーダーでありたいのか」を掘り下げるプロセスそのものが、
“経営視点で考える力”を鍛える機会になります。
このプロセスを経た人だけが、企業選びではなく“経営者選び”ができるようになります。
そして、そうして出会った企業では、短期離職はほとんどありません。
それは、PCPが単にマッチングを行うのではなく、「経営に踏み込む覚悟のある会計士」と「信頼できる経営者」を結びつける場だからです。
転職は「職場を変えること」ではなく、「生き方を選び直すこと」。
経営に近い場所で、自分の力を最大限に発揮したいと願う公認会計士にとって、
スタートアップでの挑戦は、キャリアの終点ではなく、“もう一度、成長が始まる場所”なのです。
無料相談のご案内
株式会社PCPは、公認会計士による公認会計士のための転職エージェントとして、専門性と実践力を融合した支援を提供しています。
3つの特徴
#01
会計士によるキャリアコンサル
会計士によるキャリアコンサル
株式会社PCPは、監査法人出身かつ事業会社でのマネジメント経験を有する会計士がキャリアコンサルティングをさせていただいています。 求職者様と同じ会計士としての視点でお話を伺えるため、それぞれ求職者様ごとの会計士としてのキャリアプランを想定しながら、より適切なアドバイスができます。また、事業会社でのマネジメント経験も有しているため、採用企業のマネジメント層の視点をもって求めているスキルや資質などについて、より適切なアドバイスができます。 会計士が監査法人から他業種に転職するにあたって留意すべきポイント、他業種から監査法人に転職するにあたって留意すべきポイントはそれぞれ異なります。それらの留意すべきポイントは、実際に会計士として監査法人で働いた経験を有する者、他業種で働いた経験を有する者でないとなかなか語ることは難しいものです。
#02
会計士特化の自己分析サポート
会計士特化の自己分析サポート
より納得度の高い転職を実現するためには、自己分析をするべきであると考えています。 弊社では独自で考案した「キャリアコンサルシート」を用いて、求職者に寄り添って自己分析をサポートしていきます。 自己分析はひとりでやるには限界があります。 わたしたちが第三者的な立場でアドバイスをさせていただくことで、ひとりでは見えてこなかった“気づき”を得ていただくことが出来ます。
#03
会計士専門の 性格タイプ別診断
会計士専門の 性格タイプ別診断
大学との共同研究でつくりあげた会計士専門の性格診断ツール(※)によって、会計士の性格タイプごとのキャリア情報を集積しています。
これにより性格タイプごとの統計データを分析し、あなたの性格タイプにあったキャリア形成に関する情報をご提供します。
この性格診断ツールは会計士の約10人に1人が利用しています。
※ 弊社グループ会社である(株)CPAコンパスが運営する会計士専門メディア「会計士の履歴書」の性格診断ツールを利用します
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コンサルタント
どんな働き方があるか話を聞きたい方、キャリアパスを考えたい方、今すぐ転職相談したい方も、下記お問い合わせからご連絡ください。
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